- 第1章 状況把握 です。 いわゆるご利用者様のADLのことです。
介護の世界では、ADLを記載する内容は事業所によって形式は様々です。かなり違いがあります。ケアプラン作成の基礎となるところなんです。でも、事業者ですごく違いがあります。
私は、そこを問題視しています。
なぜか?
確認する情報が違うとなるとケアプランの課題やニーズも大きく変わってしまうからです。
ですので、この基盤となるADLの情報把握について、どこでもある程度一定の基準で把握できるような書式作成の基本を作成しましたので、ぜひ取り入れてください。
T式ケアマネジメントの根幹となる部分でもありますので、しっかり学んでください。
基本中の基本は、厚労省が作成した課題分析標準項目と認定調査票です。これを中心として説明していきます。
課題分析標準項目
基本情報に関する項目
No. |
標準項目名 |
項目の主な内容(例) |
1 |
基本情報(受付、利用者等基本情報) |
居宅サービス計画作成についての利用者受付情報(受付日時、受付対応者、受付方法等)、利用者の基本情報(氏名、性別、生年月日・住所・電話番号等の連絡先)、利用者以外の家族等の基本情報について記載する項目 |
2 |
生活状況 |
利用者の現在の生活状況、生活歴等について記載する項目 |
3 |
利用者の被保険者情報 |
|
4 |
現在利用しているサービスの状況 |
介護保険給付の内外を問わず、利用者が現在受けているサービスの状況について記載する項目 |
5 |
障害老人の日常生活自立度 |
障害老人の日常生活自立度について記載する項目 |
6 |
痴呆性老人の日常生活自立度 |
痴呆性老人の日常生活自立度について記載する項目 |
7 |
主訴 |
利用者及びその家族の主訴や要望について記載する項目 |
8 |
認定情報 |
利用者の認定結果(要介護状態区分、審査会の意見、支給限度額等)について記載する項目 |
9 |
課題分析(アセスメント)理由 |
当該課題分析(アセスメント)の理由(初回、定期、退院退所時等)について記載する項目 |
課題分析(アセスメント)に関する項目
No. |
標準項目名 |
項目の主な内容(例) |
10 |
健康状態 |
利用者の健康状態(既往歴、主傷病、症状、痛み等)について記載する項目 |
11 |
ADL |
ADL(寝返り、起きあがり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)に関する項目 |
12 |
IADL |
IADL(調理、掃除、買物、金銭管理、服薬状況等)に関する項目 |
13 |
認知 |
日常の意思決定を行うための認知能力の程度に関する項目 |
14 |
コミュニケーション能力 |
意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーションに関する項目 |
15 |
社会との関わり |
社会との関わり(社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感等)に関する項目 |
16 |
排尿・排便 |
失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度などに関する項目 |
17 |
じょく瘡・皮膚の問題 |
じょく瘡の程度、皮膚の清潔状況等に関する項目 |
18 |
口腔衛生 |
歯・口腔内の状態や口腔衛生に関する項目 |
19 |
食事摂取 |
食事摂取(栄養、食事回数、水分量等)に関する項目 |
20 |
問題行動 |
問題行動(暴言暴行、徘徊、介護の抵抗、収集癖、火の不始末、不潔行為、異食行動等)に関する項目 |
21 |
介護力 |
利用者の介護力(介護者の有無、介護者の介護意思、介護負担、主な介護者に関する情報等)に関する項目 |
22 |
居住環境 |
住宅改修の必要性、危険個所等の現在の居住環境について記載する項目 |
23 |
特別な状況 |
特別な状況(虐待、ターミナルケア等)に関する項目 |
実際に記入しようと思うと、この内容だけでは不十分です。というより、これで、有効な内容を書くことができる人はすごい人です。
私は、できませんでした。
項目を細かく見ていきましょう。
わかりやすいADLを実際に記入してみます。
国からは、ADL(寝返り、起きあがり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)に関する項目と書かれていますので、寝返りについて記入してみます。
寝返りは、できる・できないだけでよいのか?それとも、認定調査票のように、自分でできる・つかまればできる・できない という内容でよいのか?
という疑問にすぐにぶつかります。
例えば、有名なMDS―Hc方式であれば、もっと細かい内容です。
では、どちらが正しいのか?どちらが良いのか?
一人作業であれば、どちらも正解です。
しかし、複数の方が関わる場合は、不正解です。
また、一人作業でも、その後の業務効率を考えるとどんな記入方法でも良いわけではありません。
私の見解は、一定の記入ルールは決めるべきです。一人しか関わらないとしても、その後の業務効率、また、引継ぎする場合もありますので、ルールは必要です。
このことを理解せず、まずは記入していくのは非効率であり、その後の混乱を招きます。
ですので、自己流はよくありません。もし、自己流で課題分析(アセスメント)しているならば、しっかり勉強して下さい。
基本を例示します。
No. |
標準項目名 |
項目 |
10 |
健康状態 |
病歴: 病気による症状と対応方法(拘縮、麻痺):無 尿カテーテル:無 ストマパウチ:無 褥瘡処置:無 経管栄養:無 |
11 |
ADL |
寝返り: 起き上がり: 歩行: 移乗: 移動: 着替え:上着 自立・一部介助・全介助 ズボン 自立・一部介助・全介助 |
12 |
IADL |
調理:全介助 掃除:全介助 買い物:全介助 外出(頻度):無 金銭管理:全て家族管理 服薬状況:自立一部介助全介助 |
13 |
認知 |
短期記憶: 日課(時間把握)理解: 季節感がある: 場所の理解: |
14 |
コミュニケーション能力 |
意思伝達:できる 視力:見える(生活に支障がない) メガネ:無 聴力:聞こえる 補聴器の使用:無 |
15 |
社会との関わり |
社会的活動への参加意欲(ユニットや施設行事):有 社会との関わりの変化:無 喪失感や孤独感:無 |
16 |
排尿・排便 |
排尿(頻度、失禁): 排便(頻度、失禁状況、コントロール方法): |
17 |
じょく瘡・皮膚の問題 |
入浴:自立・一部介助・全介助 褥瘡予防ケア有無:無 皮膚の清潔状態: |
18 |
口腔衛生 |
義歯の使用:無(総入れ歯、部分入れ歯) 義歯の管理方法:本人管理・職員管理 口腔ケアの必要性:有・無 |
19 |
食事摂取 |
食事介助:自立 一部・全介助 食事形態(摂取):主食 米飯・お粥 副食 形・刻み・ムース 、全量 食事回数:3回 水分量:1日平均 ml程度 水分摂取方法: |
20 |
問題行動 |
具体的な心理・精神症状行動: |
21 |
介護力 |
介護者の介護意思:無 家族の介護力:無 |
22 |
居住環境 |
現在の居住環境:個室(トイレ、洗面台、冷暖房付) |
23 |
特別な状況 |
虐待:無 ターミナルケア:無 |
認定調査票を基本とすることをおすすめします。
その理由は、施設では認定調査を施設内で実施する為、介護職員も理解することが大事であること。全国統一した検査方法の為、他事業所とも連携がとりやすい。他のアセスメントツールとも相性がよい等があります。
それをベースとして、施設固有のチェック項目を追加していくことが良いです。
項目を追加する際、あまり多くの項目を追加してはいけません。
また、考えなくてはならないのは面談先の状況も考慮しなくてはなりません。
家庭と病院、施設では、もっている情報に偏りがあります。
施設の考え方によっては、複数個所から情報を収集しなくてはならないケースもあると思います。
しかしながら、情報収集に1日かかってしまうことは本末転倒です。
重要なことは、利用者の生命関わる事態をさける情報がなくてはなりません。
かなり文章が長くなりましたので、今日はここまで。
次回は、状況把握について、掘り下げていきます。
なにごとも基本が大事です。介護保険の基本はこの本にすべて書かれています。